VJ という言葉の3つの顔
1つめは人を指す VJ。DJ のプレイに合わせて映像を手でミックスするパフォーマー、あるいは映像作品を発表する AV(audiovisual)アーティストのことです。Daito Manabe(Rhizomatiks、2006 年活動開始)や、パリ拠点の Nonotak Studio(Noemi Schipfer + Takami Nakamoto、2011 年結成)、ロンドンの United Visual Artists(UVA、2003 年創設、Massive Attack の舞台演出で知られる)などが国際的に代表的な存在です。
2つめは映像演出そのものを作るソフトウェアとしての VJ ツール。Resolume(オランダ)、TouchDesigner(カナダ Derivative)、MadMapper(スイス Garage Cube)、VDMX(米 VIDVOX)など、1990年代末から現在に至るまで複数のデファクトが併存しています。
3つめは「自動VJ」「無人VJ」と呼ばれる運用手段としての VJ。人が常に操作せず、曲認識やルールに応じて映像が切り替わる仕組みです。autovj.club もこの系統に入ります。この領域は、ライブ VJ の代替というより「VJ を呼べない時間帯のベースを埋める」ための新しいカテゴリとして定着しつつあります。
VJ のカテゴリ分け
- ライブ VJ(人が手で操作)
- 現場で素材を選び、瞬間の判断でミックスする。Resolume や TouchDesigner を使い、DJ と目を合わせながら場を作る。VJ 個人の腕前と感性が出やすく、ショーケース型のイベントに向きます。
- AV(audiovisual)アーティスト
- 音も映像も本人が制作し、作品として発表する形態。Ryoji Ikeda、Ryoichi Kurokawa、Alva Noto + Ryuichi Sakamoto などが典型。ギャラリー / 美術館 / 大規模フェスが主戦場で、ダンスフロアというより鑑賞対象です。
- 自動 VJ(ルールや曲認識で動く)
- 人が常駐しない前提で、曲の切り替わりや BPM に応じて映像が自動で変化する。DJ バー、ラウンジ、サブフロアなど「毎晩 VJ を呼べない現場」向け。browser-based な autovj.club もここに該当します。
- 無人 VJ(運用状態)
- オペレーターが張り付いていない運用の結果を指す言葉。"自動 VJ を入れて無人 VJ 運用にする" のように対で使われます。技術の種類というより、現場の運営ポリシーに近い概念です。
VJ が活躍する場所
VJ が最も見られる場所は、都市部のクラブ/ライブハウス/ギャラリーです。Berghain(ベルリン)、fabric(ロンドン)、WOMB(渋谷)、LIQUIDROOM(恵比寿)のようなクラブでは、ハコ付きの VJ やイベントごとのゲスト VJ が映像を回します。東京・大阪・京都の小箱や DJ バーでは「VJ が入る日と入らない日が混在する」のが現実で、ここに自動 VJ が入り込む余地があります。
海外では、MUTEK(2000 年モントリオール発、東京 / バルセロナ / メキシコシティ展開)や Sónar+D(バルセロナ、本体 1994 年創設)、Mapping Festival(ジュネーブ、2005 年)のように、AV アーティストと VJ を前面に出したフェスが毎年開催されています。これらは日本からも渡航する価値のある現場で、現代 VJ 文化の最先端を一気に俯瞰できます。